ユネスコ世界記憶遺産登録を目指して

また、捕虜となりシベリアで抑留された方の多くは、重労働や寒さ、飢えなど筆舌に尽くしがたい労苦の末、舞鶴へ引き揚げられています。引揚記念館に展示されている資料には、当時の市長名で引揚者を迎えるにあたって、市民向けに引揚者を温かく迎えようとの文章が残されています。歓迎や慰問、差し入れなどまちぐるみで迎えた市民の姿に、舞鶴から全国へ帰宅された引揚者から後々まで感謝の言葉が寄せられました。
引揚記念館

時代とともに戦争を知らない世代も増加し、引き揚げの史実は過去の出来事として年々薄れつつあります。市では、昨年度から市内全小学6年生が来館する社会学習を開始。また、貴重な所蔵品を後世に確実に継承し、次世代に平和の尊さを強力に発信するための創造的事業を展開する施設となるよう、学芸員も配置し、24年度から市直営となりました。
世界記憶遺産とは
世界記憶遺産は、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の三大遺産事業(ほかには「世界遺産」「無形文化遺産」)の一つで、世界の重要な記憶遺産の保護と振興を目的に1992年から開始されました。
文書や書物、楽譜、絵画、映画などの記録史料が対象となり、現在、世界で348件が登録されています。主なものには、「アンネ・フランクの日記」「ベートーベンの手書きの楽譜」などがあり、国内では、福岡県田川市が申請した筑豊の炭鉱記録画など697点が平成23年5月に国内第1号として登録されています。
選定基準は
- 真正性 …… 記憶遺産の本質や出所(複写・模写・偽造品でないか)が確認されていること。
- 世界的な重要性 …… 他に代替えができないもので、その損失や悪化が人類の遺産にとって損害となるもの。一定期間にわたり、または世界の特定の文化圏において、多大な影響を与えたもの。歴史上、プラスまたはマイナスの影響力を与えたものでなければならないこと。
などで、2年に1回、各国から申請された資料などを選考し、登録が決定されます。申請できるのは、1つの国につき2件までとなっています。登録されると、資料の内容などが数か国語に翻訳され、さまざまな機会に、世界に向けて発信されるほか、資料の保存促進に関する助言や支援などがなされます。